日々の心模様
移りゆく心の模様を書き留めるぺえじ。 人の心は混じり合って複雑に。 ――いつかあなたも交わるでしょう――
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判決文
主 文

 1 本訴原告(反訴被告)の請求をいずれも棄却する。

 2 本訴原告(反訴被告)は、本訴被告(反訴原告)武井敏明に対し、
58万0167円及びこれに対する平成18年3月21日から
支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 3 本訴被告(反訴原告)のその余の請求を棄却する。

 4 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、本訴原告(反訴被告)の負担とする。

 5 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。

事 実

第1 請求

 1 本訴

   本訴被告らは、本訴原告に対し、連帯して、679万7620円及びこれに

  対する平成18年12月17日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 2 反訴

   反訴被告は、反訴原告に対し、69万0762円及びこれに対する平成18
  年3月21日から支払い済みまで年5分の割合による金員をしはらえ。

第2 事案の概要

   本訴は、本訴原告(反訴被告)(以下、単に「原告」という。)が、本訴被

  告株式会社関東システム(以下「被告関東システム」という。)の募集により、

  本訴被告有限会社恵商(以下「被告恵商」といい、被告関東システムと併せて

  「被告両社」という。)をフランチャイザーとするフィリピンライブチャット

  システム事業(以下「本件事業」という。)の加盟店(フランチャイジー)と

  して、フィリピンにおいて、事務所等を開設したにもかかわらず、同国におい

  ては本件事業そのものが違法であり、同国の警察により摘発を受けたことによ

  り、事業の継続が不可能になったこと等を主張して、被告関東システム及び被

  告恵商並びに両社の代表取締役である本訴被告(反訴原告)武井敏明(以下

  「被告武井」という。)に対し、共同不法行為に基づき、フランチャイズ加盟

  料等の財産的損害、慰謝料、弁護士費用等の支払を求める事案である。

   反訴は、被告武井が、原告に対し、消費貸借契約に基づき、貸金の返還を求

  める事案である。

 1 争いのない事実等(当事者間に争いのない事実のほか、括弧内に掲記の証拠

  又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)

  (1) 被告両社は、いずれも、コンピューターのソフトの開発を目的とする会社

   である。

    被告武井は、被告両社の代表取締役である。

  (2) 被告恵商は、ライブチャット(インターネットを利用し、映像と音声を送

   受信して相手の顔を見ながら会話をすることができるシステムをいう。)を

   利用した「フィリピンライブチャットシステム」と称する事業(以下「本件

   システム」という。)をフランチャイザーとして行い、本件システムの会員

   (同システムを利用して出演者との会話等をする者をいう。)から利用の対

   価として会員料を徴収し、この会員料から諸手数料を控除した残額を売上金

   として加盟店(フランチャイジー)に振り込む業務を行っている。

  (3) 原告は、平成17年12月28日、本件システムの加盟店の募集に応募し

   た(募集を行っていたのが被告関東システムか被告恵商かは、当事者間に争

   いがある。)。

  (4) 原告は、平成18年1月中旬ころ、被告恵商との間で、次の内容のフラン

   チャイズ契約を締結した(以下「本件フランチャイズ契約」という。)。

   ア 被告恵商は、インターネットとパソコンを利用したライブチャットシス

    テムの管理・運営を行う。

   イ 原告は、ライブチャットシステムに出演する女性を(フィリピン国内

    で)雇用し、その者をライブチャットに出演させる。

   ウ 被告恵商は、原告に対し、出演女性が会員から指名された売上げに応じ

    たインセンティブを支払う。

   エ 原告は、被告恵商に対し、加盟金として、契約時に105万円を支払う。

   オ 原告は、被告恵商に対し、月額基本料金として月10万円を支払う。

   カ 原告は、被告恵商に対し、月額フランチャイズ手数料として、出演女性

    の売上げの50パーセントを支払う。

  (5) 原告は、本件フランチャイズ契約に沿って業務を行うため、フィリピン国

   内に事務所を設置し(以下「原告事務所」という。)、平成18年2月20

   日、同所において被告恵商のフランチャイズ店として事業を開始したところ、

   同国警察は、同年3月16日、原告事務所の捜索を実施した(以下「本件捜

   査」という。)。

    本件捜査は、フィリピン法第9208(2003年人身売買禁止法)第4

   条(e)及び第5条(c)違反の嫌疑によるものであり(以下、該当規定を「本件

   犯罪規定」という。)、各規定の内容は次のとおりである(甲12の1、2)。

     第4条 人身売買行為ー個人、法人を問わず、以下の行為は違法である。

       (e) 売春又はポルノに従事するために個人を保有または雇用すること

     第5条 人身売買を奨励する行為ー人身売買を奨励し、又は助長する以下

        の行為は、違法である。

       (c) IT、インターネット、印刷物、チラシその他いかなる方法に

        よるかを問わず、人身売買を助長するものの広告、出版、放送若

        しくは配布をし、又はさせること

 2 原告の主張

  (1) 本件フランチャイズ契約の締結に至る経緯

    原告は、かつて、フィリピンパブ4店を経営していたが、法律の改正によ

   り、フィリピン人女性がタレントとして我が国に入国するためのビザを取得

   することが困難になった。

    そこで、原告は、経営していたフィリピンパブ全店をやむなく閉店したが、

   閉店作業中、フィリピン人女性から、日本での仕事がないかとの問い合わせ

   を多数受けた。

    原告は、その希望をかなえる仕事がないか探していたところ、平成17年

   12月26日ころ、本件システムの加盟店を募集する被告関東システムのホ

   ームページを見て、興味を持ち、同被告が開催していたライブチャットの説

   明会に応募した。

    原告は、同月28日、ライブチャットの説明会に参加し、同所で、被告武

   井に対し、加盟の意思を告げた。

    本件フランチャイズ契約に係る契約書は、平成18年1月中旬、被告関東

   システムから送られてきたが、フランチャイザーを被告恵商とするものであ

   り、加盟金105万円の振込先も被告恵商とされていた。

    原告は、契約の相手方を被告関東システムを考えていたため、同契約書に

   違和感を感じたが、同被告の関連会社なので問題ないだろうと自分を納得さ

   せた。

  (2) 原告の行為が違法なものであったこと

   ア 原告は、本件フランチャイズ契約に基づき、被告恵商が運営し被告関東

   システムが掲載したホームページ(以下「本件ホームページ」という。)

   を通じて、本件システムの事業を行っていた。

    本件ホームページには、「結婚相手が探せる」「お見合いパブが実現」

   などと記載されていた。本件システムは、本件ホームページを閲覧した男

   性が、同ホームページに表示された女性の写真をクリックすることにより、

   インターネットを通じて女性と会話することができるものである。

    原告は、本件フランチャイズ契約に基づき、自己の雇用するフィリピン

   人女性を本件ホームページのライブチャットに出演させたところ、かかる

   行為は、フィリピン法第6955?第2条(a)第1項及び第2項に違反す

   る違法なものであった。

    すなわち、同法は、フィリピン人女性を外国人との結婚のためにマッチ

   ングさせる目的を持つビジネスを直接運営することを禁じているのみなら

   ず、間接的に運営することも禁じている。

    インターネットを使用してフィリピン人女性を外国人との結婚のために

   マッチングさせる目的を持つビジネスも、同法に違反し、インターネット

   回線によるライブチャットを利用して、外国人と結婚させる目的で、フィ

   リピン人女性を雇用することも同法に違反する。

    したがって、原告が本件システムに女性を出演させた行為も、フィリピ

   ン人女性を外国人との結婚のためにマッチングさせる目的を持つビジネス

   として、同法により禁止されていた。

  イ 被告らは、本件捜索後、本件ホームページに存在していた「恋人探しや、

   結婚相手が探せる」「フィリピーナをGETしよう」との記載を削除し、

   「当サイトは結婚斡旋業・結婚紹介業ではありません」「当サイトはアダ

   ルト行為を禁止しています」と明示した。これらは、被告らが、従前のホ

   ームページがフィリピン法第6955に違反すると考えたからである。

  (3) 本件捜索の端緒

    本件捜索の直接の原因は本件犯罪規定違反の嫌疑であるが、その捜査の端

   緒は、前記(2)アのとおり、原告の行為がフィリピン法第6955?第2条

   (a)第1項及び第2項に違反すると判断されたことである。

    原告は、本件捜索が行われた原因が被告関東システムの本件ホームページ

   にあると考えている。

  (4) 本件捜索の状況

    本件捜索当時、原告は、日本におり、現地スタッフから、要旨以下の内容

   の報告を受けた。

    「フィリピン警察に対し、原告の指示どおりに営業をしており、その営業

   内容は原告の上部組織である被告関東システムの指示どおりであって、わい

   せつなことは一切していないことを説明した。しかし、原告警察は、現地ス

   タッフの説明にもかかわらず、一方的に、アダルトビデオ等があると決めつ

   け、原告事務所内を捜索し、原告のパソコン等を押収した。

    結局、同国警察は、アダルトビデオやわいせつなことをした証拠を発見す

   ることができなかったが、担当警察官は、スタッフを全員刑務所に送ること

   ができると脅し付け、見逃してほしければ賄賂として40万ペソを支払えと

   要求した。」

    原告は、かかる報告を受け、現地スタッフに対し、40万ペソを支払う約

   束をするよう指示した。

  (5) 被告両社の責任

   ア 故意

     被告両社は、フランチャイジーを募集し、又は原告と契約を締結するに

    当たり、フィリピン人女性を外国人との結婚のためにマッチングさせる行

    為をすることはフィリピン法第6955に違反することを知っており、原

    告が同国警察から捜査を受けて損害を被ることの予見が可能であった。そ

    れにもかかわらず、被告両社は、あえて、同国内で違法とされる本件ホー

    ムページを設置し、原告をして同国内で現地事務所を開設させたのである。

    被告両社が、自らは同国内で事務所を開設せず、フランチャイジーに開設

    させているのは、両社が違法性を認識していたことの証左であり、摘発さ

    れるリスクをフランチャイジーのみに負わせる意図があったからである。

   イ 過失(説明義務違反・情報提供義務違反)

    (ア) 被告両社は、本件フランチャイズ契約に関し、フィリピン法について

     の説明をしなかった。

      フランチャイズ契約においては、フランチャイザーは、フランチャイ

     ジーに対し、「フランチャイジーの意思決定に際しての客観的な判断材

     料になる適正な情報を提供する信義則上の義務」又は「客観的かつ的確

     な情報を提供すべき信義則上の保護義務」があり、被告両社は、フラン

     チャイジーである原告に対し、原告が法律を守り、安全に業務が行える

     ように法律等を説明する義務があったにもかかわらず、これを怠った。

    (イ) 本件システムは、フィリピン法第6955違反、同第9208違反と

     して同国捜査当局により摘発される可能性が非常に高いものであった。

     a カトリック国家である同国では、元来、女性保護の考え方が強く、

     性風俗に対する取締りが厳しかったところ、ここ数年、インターネッ

     トを利用した風俗営業の増加に伴い、本件犯罪規定違反を理由とする

     取締りも強化され、過剰ともいえる捜査活動がされていた。そのため、

     違法なインターネット事業をしていない者であっても、パソコン等の

     送受信装置を多数備え、多くの女性を雇っているという事情がある場

     合には、サイバーセックス営業の嫌疑で内偵が行われ、営業主が外国

     人である場合には、違法営業との嫌疑が少しでもあれば、十分に内偵

     することなく捜査が行われていた。

      同国では、現に、平成17年1月には、サイバーセックス会社が摘

     発されている。

     b 被告らのライブチャットは、女性を1か所の営業所に集めて、そこ

     に多数のインターネットの送受信装置を備え、外部の男性と映像を見

     ながら会話ができるというものであり、外形上、違法な事業とほとん

     ど変わるところはなかった。

    (ウ) 本件ホームページは、フィリピンのメール・オーダー花嫁禁止法所定

     の不法な行為であり、摘発される可能性が非常に高いものであった。

     a 同国では1980年代に、印刷物や郵便を介してフィリピン人女

     性を外国人男性に紹介する「メール・オーダー花嫁」の存在が発覚し、

     印刷物やマスメディアを介した結婚あっせん行為を禁止する法律(以

     下「メール・オーダー花嫁禁止法」という。)が制定された。

      同法第2節においては、「メール・オーダー又は個人紹介の方法で、

     外国人と結婚させるためフィリピン人女性をマッチングする目的で、

     事業を確立したり継続したりすること」、「前号で禁止された行為を

     故意に促進するため、広告したり、出版したり、印刷したり、又は広

     告物や刊行物、印刷物、パンフレット、ビラ、宣伝資料を、配布した

     り、又は原因を引き起こすこと。」「勧誘、協力、その他の方法によ

     り、フィリピン人女性を惹きつけ誘導することで、メールオーダーや

     金銭を介する個人紹介の方法によって女性を外国人男性と結婚させる

     ことを目的とする、クラブや組合のメンバーにさせること。」が不法

     であるとされている。

     b 被告らが設置した本件ホームページには、「業界初!恋人探しや、

     結婚相手が探せるインターネットのフィリピンお見合いパブ」「フィリ

     ピーナをGETしよう!」などと広告がされており、同法に違反する。

    (エ) フランチャイザーは、フランチャイジーを使って海外で事業を展開す

     る場合、その事業が現地で違法として摘発される可能性があるかあらか

     じめ調査し、現地での摘発可能性を説明する義務がある。

      また、フランチャイザーは、現状の状況を調査し、違法な事業と捜査

     当局に思われないようにするため、どのような対策をとるべきであるか

     指示する義務もあった。

    (オ) ところが、原告は、説明会において、被告武井から「スケベなことを

     しない限り大丈夫」との説明を受けたのみである。

   ウ 過失(保護義務違反)

     フランチャイザーは、フランチャイジーがその契約期間中に安全に営業

    活動を行うことができるよう保護すべき信義則上の義務を負う。

     しかし、本件ホームページは、違法なサイトと何ら区別がつかないし、

    被告らは、フランチャイジーを保護しようという意識すらなく、フランチ

    ャイジーが安全に営業をすることができるように体制を整えて情報提供を

    行う姿勢すら放棄しており、保護義務に違反している。

  (6) 被告武井の責任

    被告武井は、被告両社の取締役として、会社に対し法令を遵守し、会社に

   対し忠実にその職務を行う義務を負っており、故意重過失によって任務を懈

   怠し第三者に損害を与えてはならない。

    被告武井は、被告両社の取締役として、原告に対する説明会に参加し、積

   極的に、原告を勧誘した。

    被告武井は、被告両社の取締役として、フィリピン国内で違法とされる本

   件ホームページを設置し、原告をして同国内で現地事務所を開設させ、損害

   を与えた。

    被告武井は、本件ホームページが同国内で違法であることを知っていたと

   思われるし、仮に故意がないとしても、同国の法律を調べず、原告に現地事

   務所を開設させたことは重過失であり、会社法429条(又は改正前の商

   法)に基づく損害賠償責任を負う。

  (7) 共同不法行為

    被告両社は、一体として行動しており、被告関東システムが契約の勧誘や

   加盟店の募集を、被告恵商が運営を分担しているのであり、被告武井も一体

   として行動しているから、共同不法行為である。

  (8) 損害

    原告事務所が本件捜索を受けた結果、違法行為が発覚し、これにより、原

   告は、現地で業務をすることができなくなった。

    原告は、以下の内訳のとおり、合計679万7620円の損害を被った。

   ア フランチャイズ加盟料等 128万1000円

   イ 原告が事業のため投資した額 256万6420円

   ウ 航空運賃 25万5000円

   エ 翻訳費用 7万5200円

   オ 慰謝料 200万円

   カ 弁護士費用 62万円

  (9) よって、原告は、被告らに対し、共同不法行為に基づき、連帯して、損害

   679万7620円の賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成

   18年12月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損

   害金の支払を求める。

  (10) 反訴について

    反訴請求に係る消費貸借契約の締結及び金銭の交付は、いずれも否認する。

    原告は、返す必要のない金銭と思っていたものである。

 3 被告らの主張

  (1) 募集行為について

    被告関東システムは、被告恵商の行う事業の加盟店の募集行為は行ってい

   ない。被告関東システムは、システムの開発を行っている会社である。

    本件フランチャイズ契約の募集をしたのは、被告恵商である。

  (2) 本件システムについて

    本件システムはフィリピン法に違反していない。

    本件システムは、平成18年2月15日に開始したものであり、フィリピ

   ン人女性が、インターネットを通じてみだらな行為とは無関係のチャットや

   会話を行うために、雇用されるものである。本件フランチャイズ契約に係る

   契約書第5条?においても、加盟店(乙・原告)の義務として、「当番組は

   ノンアダルト番組であることを乙は認識し、乙の雇用・管理しているパフォ

   ーマーが日本及びフィリピンの法令に違反しないよう指導するものとす

   る。」と記載されている。

    被告らは、いわゆる結婚斡旋業がフィリピン法に違反することは承知して

   いたが、本件システムは、結婚斡旋を目的とするものではなく、いわゆる仮

   想フィリピンパブにすぎず、客から料金を頂き、フィリピン人女性にアルバ

   イト料を支払い、会話を楽しんでもらうことで利益を得るというものである。

    メール・オーダー花嫁禁止法により不法とされている行為とも無関係であ

   る。

  (3) 本件捜索について

    本件捜索は、原告のみに原因がある。

    本件捜索の容疑は、本件犯罪規定違反である。

    被告らが伝え聞くところによると、本件捜索は、原告が雇用していたフィ

   リピン人女性に給料を支払わない等のトラブルが発生し、そのことがきっかけ

   で、フィリピン人女性が警察に何らかの被害を訴えたことによる。

    被告恵商は、現在でも、本件システムないし本件ホームページを従前どお

   り運営しており、現在の加盟店数は20社であるが、原告以外に摘発された

   フランチャイジーがないどころか、フィリピン当局から警告や指導を受けた

   ことも一切ない。

    原告が主張する、フィリピン国内で摘発された会社の事案は、本件システ

   ムとは根本的に内容を異にする。

  (4) 反訴について

   ア 被告武井は、平成18年3月16日、原告に対し、30万ペソを貸し付

    けた。その際、被告武井と原告は、原告がフィリピンに到着したらすぐに

    返済するとの約束を口頭でした。

     原告は、同月19日、フィリピン国内で被告武井と会った際、同被告と

    の間で、借り受けた30万ペソを翌日(平成18年3月20日)に支払う

    との合意をした(以下「本件消費貸借契約」という。)。

   イ よって、被告武井は、原告に対し、本件消費貸借契約に基づき、69万

    0762円及びこれに対する弁済期の翌日である平成18年3月21日か

    ら支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

     (なお、反訴請求の趣旨は、平成18年3月16日時点の通過レートに

    よる30万ペソの換算額69万0762円によるものであるが、被告武井

    は、口頭弁論終結時の外国為替相場により30万ペソを日本円に換算した

    金額を元本とする支払を求める趣旨である。

第3 当裁判所の判断

 1 前記争いのない事実等のほか、証拠(甲18、乙4、原告本人及び被告本人

  の各尋問結果のほか、括弧内に掲記のもの。ただし、認定に反する部分を除

  く。)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

  (1) 被告両社は、いずれも、コンピューターのソフトの開発を目的とする会社

   である。

    被告武井は、被告両社の代表取締役である。

  (2) 被告恵商は、本件システムをフランチャイザーとして行い、本件システム

   の会員から利用の対価として会員料を徴収し、この会員料から諸手数料を控

   除した残額を売上金として加盟店(フランチャイジー)に振り込む業務を行

   っている。

  (3) 原告は、平成17年12月28日、本件システムの加盟店の募集に応募し

   た。原告が受け取った本件システムのパンフレット(甲2)には、被告関東

   システムが開発元であるとの記載があるほか、「フィリピンパブオーナー様

   への新しいスタイルのビジネス提案」「インターネットで仮想フィリピンパ

   ブ FCライブオーナー様緊急募集」「フィリピーナタレントをパフォーマ

   ーと呼ばれるタレントとしてライブチャットに出演させ、恋人感覚で男性と

   ライブチャットを楽しんでいただきます。」「現地でフィリピーナ(パフォ

   ーマー)を集めてもらいます。パソコン、インターネットの回線とパフォー

   マー1名に付き1台のPCを用意していただきます。」等の記載がある。

  (4) 原告は、平成18年1月中旬ころ、被告恵商との間で、本件フランチャイ

   ズ契約を締結した。

    同契約の内容は、前記争いのない事実のとおりであり、被告恵商が、イン

   ターネットとパソコンを利用した本件システムの管理・運営を行い、原告は、

   本件システムに出演する女性をフィリピン国内で雇用し、その者をライブチ

   ャットに出演させるというものであり、本件システムの概要は、同システム

   を利用してフィリピン人女性とチャットをしようとする者が、その会員とな

   り、被告恵商が管理するウェブサイト(本社ホームページ)にアクセスし、

   インターネットを通じてフィリピン人女性と会話等をし、その利用時間に応

   じた料金を被告恵商に支払い、被告恵商は、原告が雇用したフィリピン人女

   性との会話等につき会員から支払われた料金から、50パーセントの手数料

   等を控除した残額を、原告に支払うというものである。

    また、本件フランチャイズ契約に係る契約書(甲3)においては、原告の

   義務として、本件システムがノンアダルトであることを認識し、原告の雇用

   ・管理する者が日本及びフィリピンの法令に違反しないよう指導するものと

   されているほか、原告の雇用・管理する者(パフォーマー)がこれに違反し

   て本件システムでアダルト行為を行った場合には、被告恵商が本件フランチ

   ャイズ契約を解除することができるものとされている。

    そのころの本件ホームページには、「業界初!恋人探しや、結婚相手が探

   せるインターネットのフィリピンお見合いパブ」「話せば話すほど貯まる!

   マイレージを貯めてフィリピーナをGETしよう!」等の記載のほか、「当

   サイトではアダルト行為または関連する行為を一切禁止しております」との

   記載があった(甲1の1)。

  (5) 原告は、被告恵商に対し、平成18年1月25日に105万円を、同年2

   月15日に23万1000円を、それぞれ支払った(甲4、16)。

  (6) 原告は、平成18年2月20日、フィリピン国内において被告恵商のフラ

   ンチャイズ店として事業を開始した。

  (7) フィリピンの警察は、同年3月16日、原告事務所につき本件捜索を実施

   した。

    同国マニラ市所在の裁判官が捜査官に対し発付した本件捜索令状(甲5)

   には、令状請求者である捜査官及び証人2名(コンピューターオペレーター

   のダニエル・C・アンセルモとシェイラ・サンチャゴ)を調べた結果、本件

   犯罪規定(フィリピン法第9208(2003年人身売買禁止法)第4条

   (e)及び第5条(c))の違反があったこと、その違反がされていること又は今

   まさに違反しようとしていることを信ずるに足りる合理的な根拠がある旨並

   びに原告が以下の物件を所持・管理していると信ずるに足りる十分な理由が

   ある旨の記載があり、物件として、コンピューターモニター、CPU、マウ

   ス、キーボード、プリンタ、スキャナー、ネットワークケーブル等が列挙さ

   れ、当該犯罪に関連する物の差し押えをするものとされている。

  (8) 本件捜索の当時、原告は、日本国内におり、原告事務所のスタッフから本

   件捜索の事実の報告を受けてこれを知った。

    被告武井は、そのころ、フィリピン国内におり、本件捜索の実施後間もな

   く、その事実を聞いて知った。

    被告武井は、本件捜索の実施後間もなく、原告事務所のスタッフが同国警

   察から40万ペソの支払を求められているとの話を聞き、同国内のパンパシ

   フィックホテルにおいて、原告事務所のスタッフ(メリジェーン)に対し、

   30万ペソを手渡した。

    原告は、本件捜索の報告を受けて、同年3月19日ころ、フィリピンに行

   き、被告武井と会った。

  (9) 原告は、平成18年当時、インターネット上でブログを製作・公開してい

   たところ(乙2。以下「本件ブログ」という。)、本件ブログには、以下の

   ような記載がある。

    「私は日本に帰っていた。ある日、突然携帯電話が鳴り出し、電話に出る

   と向こうで大きな泣き声がする。「どうした?何があった?」と問うと、

   「今ポリスが居る。みんな捕まえるだって。バイオレイションあるだっ

   て。」意味不明な言葉に私も戸惑った。」「「日本との更新が人身売買に当

   たり、「この事務所でサイバーセックスをやっている。」との通報があり、

   家宅捜査、責任者の逮捕、証拠品の押収をされている」とのこと。」「挙げ

   句の果てNBIと示談交渉を始め400,000ペソで決着をつけると言う

   のである。」「「社長!払わないと私達全員モンキーハウスだって、社長も

   指名手配だって弁護士も払ったほうが良いって言っている。」彼女達の泣き

   叫ぶ声と、助けてお願いの声に、選択の余地が無く、仕方なく支払いの約束

   を弁護士名でサインさせた。何と言うことだ・・・。まったくの濡れ衣に怒り心

   頭だった。」

    「何の為のお金か解らないが(こんな経験は今まで一度も無かったので)、

   とにかく、私まで事が及ぶのを避ける為にもNBIの要求通りお金を渡す工

   面をし、本部の力を借りながら残金300,000ペソを支払う手はずを整

   えた。」

    「今回、この仕事を始めるにあたって元当店のタレントに声を掛けた。」

   「その数17名、その中に今回の問題(NBIの手先)になる子が含まれて
 
   いた。」「名前は通称”メグ”と”アップル”と言い、なかなかの美人で、

   二人は親戚関係にあった。後でわかった話ではあるが、NBIに通報者とし

   ては、一人40000ペソの報奨金が出るらしい。こつこつと真面目に仕事

   をしても、もらえる給料は10000ペソ位。それならポリスと組んで摘発

   側に回ろうと彼女達が考えるのは当然かもしれない。」「このメグとアップ

   ル…事務所にあった日本でのネット広告を持ち出しネットでお見合い、フィ

   リピイナをゲツトしよう、という文面を警察に報告し、報奨金をねらつたの

   ではないかと思はれる節がある。」

    「NBIは、400,000ペソ支払いの約束のサインを弁護士にさせ、

   その場に有るコンピューターおよび周辺機器をダンボールに詰めこみ、悠々

   と笑いながら引き上げていったそうだ。本当にこんな暴挙許されるものであ

   ろうか?」

    「なんだか落ち着かないこの三日間、とるものもとらずとり合えず渡

   比。」「とりあえず、百万円の現金を持って出かけた。本部の社長さんも私

   の到着を待っているとの事。」「タクシーでミーティングの場所に着いた。

   そこに社長さんは待っていた。」「本部の社長とのミーティングは夜明けま

   で続いたが、疲れもあり300,000ペソの立てかえに感謝をし引き上げ

   た。」

 2 本件請求について

  (1) 本件請求は、本件捜索による損害の賠償を求めるものであるところ、前記

   捜索令状(甲5)によれば、本件捜索は、本件犯罪規定の違反の嫌疑に基づ

   き行われたものであることが明らかである。

    原告は、前記のとおり、本件ホームページがフィリピン法第6955?第

   2条(a)第1項及び第2項に違反する違法なものであったことが本件捜索の

   原因・端緒である旨主張するが、これを認めるに足りる的確な証拠はない。

   すなわち、本件各証拠を精査しても、本件捜索の被疑事実が、前記捜索令状

   の記載内容にもかかわらず、上記フィリピン法第6955?第2条(a)第1

   項及び第2項違反であったとか、フィリピン警察が本件ホームページを捜査

   の端緒とした等の事実を推認させ得る証拠は、見当たらない。

    したがって、原告の主張のうちフィリピン法第6955?第2条(a)第1

   項及び第2項違反の違法性をいうものは、その余の点を判断するまでもなく、

   理由がない。

  (2) 前記捜索令状(甲5)及び弁論の全趣旨によれば、本件捜索は、フィリピ

   ンの裁判官による審査に基づき発付された令状に基づくものであり、同国下

   の手続を履践したものであることが窺われるところ、このように同国警察が

   主体的に実施した捜索により仮に損失又は損害が発生したとしても、同国警

   察と何の関連も認められない被告らの行為と損失又は損害との間に相当因果

   関係があるとはいい難い。

    すなわち、原告の主張が本件捜索を違法というのか、適法というのかは必

   ずしも判然としないが、本件捜索が適法な手続を経て実施されたものであれ

   ば、これにより何らかの損失が発生したとしても、それは特段の事情がない

   限り甘受すべきものといわざるを得ない。そうではなく、仮に、フィリピン

   警察による本件捜索が違法であったならば、そのような違法捜査により何ら

   かの損害を被ったとしても、その損害は、捜索の主体と関連のない被告らの

   行為と相当因果関係にあるとはいい難い。

    なお、同国警察による本件捜索が、違法なものであったというべき具体的

   事情は見当たらない。

    (原告は、本件捜索の被疑事実に該当すべき犯罪が存在しなかった旨や、

   本件捜索によっても違法な物件が何ら発見されなかった旨を主張・供述する

   が、その後に起訴・有罪とされなかったことや有意の証拠物が発見されなか

   ったことをもって直ちに捜索が違法といえるかには疑問がある。)

  (3) 原告は、被告らの故意を主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

    原告は、前記のとおり、被告らの過失に関し、本件ホームページがフィリ

   ピン法第6955?第2条(a)第1項及び第2項ないしメール・オーダー花

   嫁禁止法に違反すること及びこれに基づくフィリピン警察による摘発可能性

   を主張するが、その各法規に違反する事実があったか否かにかかわらず、そ

   のような被疑事実が本件捜索の根拠とされたとの事実を認めるに足りる証拠

   はないものであるから、原告らが賠償を求める損害との関係で過失の根拠と

   はなり得ず、原告の主張には理由がない。

    また、原告は、被告らが原告に対し本件捜索を受ける可能性が高いことに

   つき説明すべき義務を負っていた旨主張するところ、本件フランチャイズ契

   約締結当時に原告が本件捜索を受ける可能性が高いといい得る客観的状況に

   あったかは明らかでないが、その点は措くとして、本件において、被告らが

   フィリピン警察の事情や情報等について原告よりもよく把握していたとはい

   えず、仮に被告らが予見可能性を有していたとしても、原告の予見可能性を

   大きく上回るものであったとはいえないし、被告らと何ら関連のない同国警

   察が個別の事案・事件につきいかなる方針を採り、いかなる捜査を遂行する

   かを具体的に想定することは困難であるといわざるを得ないから、本件フラ

   ンチャイズ契約締結の際に、同国警察が原告事務所を捜索する可能性につき

   説明すべき義務があったとはいえない。なお、被告恵商は、本件フランチャ

   イズ契約において、原告に対し、「アダルト行為」すなわち、わいせつな、

   又はみだらな行為をすることを禁じていたものである。

    また、同様の理由により、保護義務違反の主張にも理由がない。

  (4) 以上の次第であり、本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく、

   理由がない。

 3 反訴請求について

   本件消費貸借契約につき検討するに、被告武井は、本件尋問期日において、

  概要、「原告から連絡があり、捜査があって賄賂を払わなければならず、30

  万ペソ位足りないから立て替えてくれないか、貸してくれないか、原告がフィ

  リピンに飛んだらすぐに払うから、との話があった。私は、これを了解し、フ

  ィリピン国内のパンパシフィックホテルにおいて、原告のスタッフであるメリ

  ジェーンという女性に対し、30万ペソを渡した。その後、原告がフィリピン

  に来て、立て替えていただいたお金、明日お支払いしますとの回答であった。

  しかし、原告は、そのまま返さなかった。」旨供述する。

   かかる供述は、前記判示の経緯(本件捜索の当時に原告が日本国内におり、

  被告武井がフィリピン国内にいたこと、被告武井が原告のスタッフに30万ペ

  ソを手渡したこと、その後に原告が同国に来たこと等)と整合しているし、原

  告ないし原告事務所のスタッフがフィリピン警察から支払を求められていたと

  の話があったのであり、被告武井が同国警察から要求されたとの事実はないこ

  と、したがって、被告武井による30万ペソの交付が、被告武井自身の債務の

  支払であったとか、贈与であった等の可能性が考え難いこと、原告製作の本件

  ブログによっても、同国警察からの40万ペソの要求を受けたスタッフからの

  相談に原告が乗り、40万ペソを支払うことにつき原告がスタッフに対し了承

  ・指示をしたことが窺われるとこ等の諸事情を総合考慮すると、これを信用す

  ることができる。

   これに反する原告供述は、採用することができない。

   以上により、被告武井が、平成18年3月16日ころ、原告に対し、30万

  ペソを貸し付けたこと(具体的な30万ペソの交付は、そのスタッフに対して

  された。)、原告が、同月19日、被告武井に対し、30万ペソを翌日に返還

  するとの約束をしたことが認められる。

   なお、本件口頭弁論終結の日(平成21年2月17日)における為替相場は、

  1ペソ当たり1.933891円であり(当事者間に争いがない。)、30万

  ペソを換算すると58万0167円となる。

 4 よって、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、被告武井

  の反訴請求は58万0167円及びこれに対する平成18年3月21日から支

  払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理

  由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却するこ

  ととし、訴訟費用の負担について民事訴訟法64条本文、ただし書、61条を、

  仮執行宣言について同胞259条1項を、それぞれ適用して、主文のとおり判

  決する。

    名古屋地方裁判所民事第6部


         裁判官   清  藤   健  一
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